ウイルソンスチームSは、プロのストリンガーさんの卓越した技術がそのストリングパターンで体感できる、なんちゃってプロのストリンガーさんのガット張りラケットです。
ガットは、プロのストリンガーさんのように、とにかく新しいガットを張ること、まずは指定されたルキシロン4Gを張ること、そして、緩みにくい張り方ができるところに頼むこと、が、なんちゃってラケットの条件です。
ただ、当然、プロのストリンガーさんのガット張りを最上級のパン職人が作ったパンとすれば、スチームSは山崎パンさんの工場で製造したパンくらいの差はあります。最上級と言われる職人さんの域は確かにすごいですが、誰もがパンを食べることができるようにした山崎パンさんの工場も同じくらいすごいように、このラケットを考え、製造販売したウイルソンさんは偉いです。
スチームSのスナップバックのテストでわかるように、スピンが掛かるのはボールとガットとのインパクトのときです。ラケットは固定されているので、ラケットで擦るというパフォーマンスはありません。ボールの勢いと入射角(面に垂直に当たっていません)だけで、通常のラケット以上のスナップバックがかかっています。
スピンを実現させるには、擦らないスイングを最初から修得する覚悟が大事です。これは、本当に難しいことだと思いますが、しなければスチームSはラケットにSPINと印字されただけの、今使っているラケット以下のパフォーマンスしか発揮しません。
数あるプロのストリンガーさん自慢のラケットでも同じことがいえます。コメントを読む限り、購入者の多くが、スピンを掛けることができず、ガットをすぐに切っているのが想像できます。なぜなら、強烈なスピンが掛かったなら、ボールがピンポン球のように弾むといったコメントを書くはずのに、そんな人がほとんどいないからです。
革新的なものを使うときに大事なことは、スクラップアンドビルドの覚悟です。真実を知った後に、これまでを清算して新生できるかどうかが鍵です。新生させなければ、これまでのように、ラケットは何を使っても同じというナンセンスな意識で、テニスみたいなスポーツを続けるだけです。