Regnirt-sorpの日記

a recreational tennis player's bible

ストリンギング(ガット張り替え)サービスの不安商法

直近の情報では、2017年のテニス人口は約530万人でした。2018年の日本テニス協会登録は、1万1千人余り(プロ登録387人、一般登録3,289人、ベテラン登録8,090人))でした。

http://blog.rcn.or.jp/tennis/

情報:人口等環境実態調査|日本テニス協会公式サイト[JTA]

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そんな国内テニス人口の状況ですが、プロストリンガーのブログでは、自分のお店以外でガット張り替えを買う消費者は、カルト情報に基づいてショップとストリングを選んだ結果、酷いスイングを晒し、それは地上の地獄だと表現しています。それ故に、日本のテニス小売市場は、テニス先進地(どこと比較しているか不明ですが)と比べ、40年遅れていると主張しています。

このプロストリンガーは、自身を、自称日本を含む極東アジア最高レベルのガット張り替え人と豪語しています。その背景にあるのは、プロツアー大会の試合会場のブースで、プロ選手のためにラケットサービスを提供するプロのストリンガーに必要な任意団体認定ライセンスの保持です。しかし、プロストリンガーのブログを読めばわかりますが、前述したように、破綻したロジックで展開する品位のない内容であり、ライセンスは、この人の発信の信ぴょう性を裏付けるものではないことは明白です。

 

国内で、プロ登録している競技者に加え、インターハイインターカレッジレベルの学生なら、練習量が多く、ストリングの張り替え費用負担軽減のため、個人や所属で所有するストリングマシンとスポンサーから提供されたりした200m以上の業務用リールストリングを使って、コーチや選手自らがストリンギングしているのが現状で、資産家の子息でない限り、選手自らこのライセンスレベルの人に毎回お金を払ってガット張り替えしている事例はほとんどないと思います。

恐らく、国内でプロ登録している人達(387人)が、このレベルのガット張り替えを使うとすれば、いつものガット張り替えができないときだけでしょう。認定資格のライセンスを保持したストリンガーが資格を活かせる場所は、国内外のプロツアー会場や国内開催される大きな大会会場のストリンガーブースがある場合のみです。

国内でのプロツアーでは各国のプロのストリンガーが集まるので必要ないのか、国内大会ではこのライセンスレベルのストリンガーの需要がないのか、わかりませんが、任意団体USRSAが認定するライセンスを持つストリンガーは国内に3人しかいません。

 

上位100位以内のツアープロ選手のラケットは、国内外のスポーツ用品店で発売しているモデルと違うのは、周知の事実です。ガット張り替えライセンスの技術は、ストリンガーの発言内容はどうあれ、ラケットメーカーが発売するほとんどのラケットフレームを張り替えできる技術と言えます。そのため、メーカーがプロ選手や競技者レベルの学生のために提供する特注ラケットの張り替えの品質保証となっています。

 

ところが、一般のテニス愛好家が使う普通に市販されている大手メーカーラケットは、このライセンスレベルのガット張り替え技術を必要としていません。なぜなら、大手ラケットメーカーは、市販のラケットデザインを考えるとき、一般愛好家やこれからのジュニアがいかに楽しく簡単にテニスができるかを基準にしているからです。

世界で活躍するプロ選手やジュニア選手の発掘、育成は必要ですが、その人材を見つけるために、テニス人口の裾野拡大がなければ探しようがありません。さらに、テニスを盛り上げたり、サポートする人達が一定以上いなければ、テニス自体が成り立たちません。大手ラケットメーカーなら、世界的なテニス市場を作るため、プロダクトを創造しているはずです。

つまり、大手メーカーの市販品のラケットデザインの基本は、誰でもが簡単に使え、次のモデルチェンジ時期まではメンテナンスフリーであることです。

普通の市販品ラケットは、2〜3年毎のモデルチェンジで、プロ選手やプロコーチの意見や契約プロ選手が実際に使うラケットに導入しているテクノロジーを付加し、時代を先取りするカラーリングを施してアップグレードされます。

広告塔となるプロ選手に合わせ、一般ユーザーもモデルチェンジの時期は、今のラケットをそのまま使い続けるか、ニューモデルを買うかの選択が生じます。

しかし、テニスラケットは、同じ形に作られたコモディティなので、流行を先取りする斬新なカラーリングを採用せざるを得ません。さらに、ウイルソン、バボラ、ヨネックスは、ラケットグリップ自体の交換ができなくなっており、ラケット周りの消耗品のストリングやリプレイスメントグリッブは、汎用品が使えますが、互換性のないグロメットは流通在庫は多いとは言えなく、ラケットの寿命は、素材の耐用年数ではなく、メーカーの事業継続できる事業計画に基づいています。ラケットの意図的なディスポーザブル化を進める目的で、ここ数年は、並行輸入品と称した、入手しやすい価格を設定したB品ラケットの流通も急増させています。

大手メーカーがこのようなマーケティングを進めているので、ラケットに拘るプレーヤーは別として、向上心のある普通の小金持ちの愛好家は、流行遅れの古臭いデザインのラケットの消耗品を交換して性能を維持していくより、斬新なカラーリングとブレークスルーの革新技術が導入されるニューモデルのラケットを買うことが、テニス市場の維持に直接繋がると思います。

 

話は戻りますが、このプロストリンガーが指摘するような、酷いスイングを晒した地上の地獄の光景は、プロ選手や一般選手登録した人や学生競技者レベルでは、絶対に見ることはできません。理由は簡単です。テニスを始めた頃から、毎日ひたすら厳しい練習をしてきたからです。

そうでない人が、酷いスイングを晒して地上の地獄の光景になるのは、驚くことではなく、当たり前の光景でしょう。そう考えれば、その人達がストリングを変えただけで、地獄の光景がプロ選手の練習風景になる可能性は皆無です。

消費者本人の現実の姿を批判して、ストリンギングサービスを買うだけで、あり得ないことを期待させること自体、痩せ薬や金儲けの話と同じレベルの詐欺と言えます。自分のガット張り替えを売らんがために、地獄に例えて商売するのは、不安商法でしかありません。

 

テニスに限らず、世の中には、詐欺の不安商法があります。努力なしで、テニスが上手くなったり、痩せたり、大金を手にすることが、魔法のように簡単に叶う訳がありません。願いを叶えるため、個人で努力し、努力にたくさんの時間をかけるしかありません。それでも叶わないのも現実です。道具の良し悪しは、そのレベルに達してから、後付けで考えられたことが少なくありません。信じるか信じないかは個人の自由ですが、決して道具ありきでないはずです。箔のあるストリンガーライセンスの肩書きでも、やっている商売が、不安商法やクーリングオフできない「呪いの契約」を前提としているならば、注意するしかありません。

 

ストリングマシンを持っていないなら、ストリングの張り替えはお店に頼むしかありませんが、大手メーカーの市販ラケットは、新発売後、次のモデルチェンジまではメンテナンスフリーであり、必要なストリンギングは、ストリングマシンを持っているなら、個人でやっても問題ありません。もちろん、近所で普通に経営しているテニスショップで大丈夫です。日本のどこにでもある大手量販スポーツ店なら値段もオープンであり、プロストリンガーのような「呪いの契約」を交わして、不透明な買い物をする必要はありません。

 

スポーツオーソリティの技術背景

https://www.sportsauthority.co.jp/sp/location/racket.php

 

ストリンギング サービス料金を比較したブログ

大型スポーツ店のガット代と張替え料金を比較してみた